目次
グループホームとは
グループホームの正式名称は?
グループホームには、それぞれ「認知症の高齢者」と「障がい者」を対象にした2つのものがあります。
もともとグループホームはヨーロッパから広まった障がい者解放運動(ノーマライゼーション)の一環で、視覚・知的障がい者を隔離された施設から解放することを目的に始まった運動が、現代においては児童や高齢者にまで対象が拡大し広まりました。
「認知症の高齢者」を対象としたグループの事を『認知症対応型共同生活介護』、障がい者を対象としたグループホームの事を「共同生活援助」といいます。
ちなみに今回ご紹介するグループホームは、断りが無い限り、障がい者向けの『共同生活援助』を指します。
障がい者向けグループホームは、地域のアパート、マンション、戸建て住宅等を共同生活の拠点とし、共同生活を営む住居で相談、入浴、排せつ、または食事の介護、その他の日常生活上の援助を行う施設です。
これらのサービスを通して期待されることは、障がい者の方の孤立の防止、生活上の不安の軽減、共同生活による身体・精神状態の安定など、障がい者自身の自立です。単なる支援ではなく、本当の意味で彼らを支えることを目的にしています。
グループホームへの入居対象は障がいのある方です。とくに身体障害のある方で、65歳未満の方または65歳に達する日の前日までに、障害福祉サービスもしくはこれに準ずるものを利用したことがある方に限られています。
グループホーム3つのタイプ
グループホームには3つのタイプがあり、利用される方の状況に合わせてサービスを選択します。
それぞれのタイプについて、簡単に特徴を説明します。
(1)介護サービス包括型
対象となるのは身体障害、知的障害、精神障害、難病患者の方など。
介護サービスについては当該事業所の従業者がすべて提供し、 利用者の状態に応じて介護スタッフ(生活支援員)を配置します。
(2)外部サービス利用型
対象となるのは身体障害、知的障害、精神障害、難病患者の方など。
介護サービス包括型とは異なり、介護サービスは、事業所が委託契約を結んだ指定居宅介護事業者が行います。介護スタッフ(生活支援員)の配置は必要ありません。
事業所の従業者がサービスを行うこともありますが、この点に関しては事業所の方針によって異なります。
(3)日中支援型
対象となるのは常時介護を必要とする方。
平成30年に新設された制度で、重度障がい者への支援を目的とし、夜間を含む1日を通した生活支援員または世話人の配置など、常時の支援体制を確保しつつ、必要な介護サービスを提供します。
日中支援型は1つの建物への入居を20人までとしています。
なお、緊急一時的な宿泊の場を提供する「短期入所」の併設が必置となります。
グループホームの法律は?
グループホームに関連する法律として定められているのは「障がい者総合支援法」です。
引用:厚生労働省HP:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html
「障がい者総合支援法」では、障がい者の支援対象の見直し、障がい者支援区分の名称・定義の改正、障がい者に対する支援の見直しなどが行われました。
特筆すべきはこれまでの「共同生活介護(ケアホーム)」が「共同生活援助(グループホーム)」として一元化されたこと。
さらにグループホームにおける新たな支援形態として前述した「外部サービス利用型」が設定されたことです。
「障がい者総合支援法」の制定によって、障がい福祉サービスや支援対象者は拡大され、今まで十分な支援を受けられなかった人たちもサービスを利用することができるようになりました。
とはいえ、まだまだ障がい者数は増加傾向にあり、今後も障がい福祉サービスを利用できる施設が求められており、障がい者グループホームへの入居希望者は今後も増加すると予想できます。
利用者数の推移(6ヶ月毎の利用者数推移)(障がい福祉サービスと障がい児サービス)
グループホームの現状は?
現在、全国に「障がい者グループホーム」といわれる施設は、約7600施設(2017年時)あります。2015年ごろまでは、施設数は横ばいで推移していましたが、ここ数年は増加傾向にあります。
実際に国が福祉サービスへの予算は年ごとに増え、10年前と比べると2倍の1兆4000億円近くまで増加しており、自立の象徴である障がい者自身の就労が実現できるよう、今後も国や地方から力強い支援は続くことが予想できます。
障がい福祉サービス関係予算額は10年間で2倍以上に増加
グループホームの運営実態は?
グループホームの運営をめぐっては、時々センセーショナルなニュースを目にすることもあります。
実際に現場を知らない私たちは、そのようなニュースを見聞きすると、グループホームの運営自体に不安を抱いてしまいがちですが、安心してください。ニュースなどで取り上げられるような問題は、誠意を持って運営していれば、ほぼ起こりません。
ただ、グループホームは、サービスの特性上、他人同士で生活を送り、互いに支え合うものなので、利用者への支援内容や環境はもちろん、支援者への待遇やケアなども十分な配慮しなくてはいけません。
障がい者グループホームの収支モデル
グループホーム自体は社会的に非常に意義のある福祉サービス事業です。そのため国も、協力してくれる事業主に対して十分な収益性が確保できるような制度にしています。
他の福祉サービスと比較しても収益性、安定性ともに高い内容です。
さらに高齢者を対象したグループホームと比較すると、他障がい者グループホームは参入障壁が低く、取り組みやすくて利益が出やすい収支モデルといえるでしょう。
項目 | 障がい者グループホーム | 高齢者グループホーム |
---|---|---|
資格要件 | 比較的緩い | 厳格 |
人件費 | 安い | 高い(有資格者) |
設備基準 | 比較的緩い | 病院並の品質が求められる |
設備費(参考費用) | 300万~2,000万 | 5,000万~2億 |
許可 | 申請 | 選考 |
損益分岐点 | 高い(利益が出にくい) | 低い(利益が出やすい) |
とはいえ、参入障壁が低い分、施設の開設に関する許認可の取得や日々の運営は厳格化が求められます。
給付金目当てで、利用者のことをおざなりにした施設に対しては、行政から厳しい指導が入りますので十分注意してください。詳しくは「グループホーム運営のトラブルと対応」でお伝えします。
グループホーム1ヶ月分の収支モデル
では実際に、どのような収支になるのでしょうか。
定員7名のグループホーム、1ヶ月分の収支モデルを見てみましょう。
・定員7名の場合(月間)
<収入>
給付金:月間910,000円~1,190,000円
家賃:月間245,000円~500,000円
合計:1,155,000円〜1,610,000円
<支出>
家賃:200,000円~420,000円(※物件による)
人件費:450,000円~650,000円
合計:650,000円〜1,150,000円
※利用者一人当たり130,000円〜170,000円の給付金計算
※光熱費=利用者実費負担につき除外
粗利益だけでも1ヶ月に500,000円〜950,000円あり、大きな利益を生むことがお分かりでしょう。
もちろん施設の規模によりますが、利用者が増えるたびに給付金も増加するので、収益性が高く、安定しているビジネスモデルと言って過言はありません。
1ヶ月の収支モデル(定員7名)
国が率先して進めている障がい者支援のプロジェクト。今後も社会貢献に協力してくれる事業者を国が厚くサポートしてくれる限り、経営側としては理想的なビジネスを展開できるでしょう。
グループホームは儲かる? でも・・・
障がい者グループホームは、障がい者の自立を支援する国の施策という一方、運営する側から見ると安定した利益が得られるビジネスです。前述のとおり、誰にでも簡単に利益を出せる収支モデルなので、とても多くの方が関心を寄せています。
グループホームを運営することで、国から毎月一定の給付金を得られることは事実です。儲かるという表現が正しいかは別として、安定した収入があるビジネスモデルは、一般企業から見るととても魅力的に見えるので無理はありません。
安定収入があると聞いてグループホームの経営を真剣に検討する一方、心のどこかでビジネスとして福祉事業に取り組むことについて罪悪感を感じ始めるかもしれません。
「福祉はボランティア精神で取り組まないといけないからお金はもらいにくい。」
「お金儲けとして見られてしまうのが心配・・・。」
安心してください。福祉事業こそビジネスとして成立させるために真摯に取り組むべきなのです。
なぜなら、社会福祉関係のサービスは利用料金が安価だったり、ボランティアの方中心で無償で運営されていたりと、語弊を恐れず言えば、まだまだ無料奉仕の枠から抜けきれないところがあります。
志は尊く素晴らしいものだと考えますが、実際に現場を見ると、利用者(障がい者)が満足できるレベルの支援を受けられているとは言えない実情も。
旧態依然、障がい者の方々が自立し、私たちと同じ社会の一員として活躍していくためには様々な障壁が立ちはだかっています。
その障壁を取り除き、福祉事業をビジネスとして真剣に取り組み、生まれた利益を次なるサービス向上に還元することが、彼らを支援することに繋がると考えます。
国内には障がい者が940万人近くいて、その数は年々増えています。そして障がい者を家族に持つ人たちは今この瞬間でも、理想の環境、安心して利用できる場所を求めています。
ビジネスとして取り組むことに罪悪感として感じるよりも、真剣にビジネスとして取り組み、社会貢献につながることを目指す企業が増えれば、もっと住みやすい社会になるでしょう。
グループホームのメリットとデメリット
グループホームが社会貢献度が高く、安定して収益が得られる事業モデルなので、利用者や国、そして事業主それぞれにメリットがあることはわかっていただけたでしょう。
ただ実際に設立するとなると、利用者の方々にとっては大切な生活の拠点となるわけですから、うまくいかないといって途中で簡単にはやめることはできません。
「こんなはずではなかった!」という失敗を防ぐためにも、事業者側、利用者側それぞれにどんなメリット・デメリットがあるのかを事前に知っておきましょう。
メリット
事業者側のメリット
業者側のメリットは、他の福祉サービスにはない「安定性」です。
収益面でも安定していると述べましたが、利用者のニーズを捉え、適切な施設整備・運営を行えば、1つの事業所に対する利用者の利用期間が長くなり、結果、長期運営が可能です。
長期運営ができるようになれば、事業全体に対する資金繰りや人材確保も容易です。 景気に左右されない運営と事業展開が可能ですし、それだけでなく未利用不動産の有効活用や相続対策としても非常に効率的です。
利用者側のメリット
ご家族の負担軽減、家賃負担軽減、日々の生活家事負担の軽減、将来的な不安解消と挙げれば、メリットの数はきりがありません。
利用者のご家族の方は、長年、自分の時間などを犠牲にしながら、常につきっきりで介護あるいはサポートを続けてこられた方ばかりです。
通常であれば、ある程度の年齢になれば自分のことは自分で行い、将来的には親元(家族)を離れて生活していきますが、障がいを持った方々の中にはそうしたことが困難な方も多いため、どうしても家族が付き添う形になります。
さらに、ご家族の方(特に親御様)が高齢になってくると、将来に対する不安もつきまといます。このような負担や不安が解消できるため、グループホームは家族の方にとっても必要不可欠なサービスなのです。
デメリット
事業者側のデメリット
事業者側のデメリットとしては、初期コストが大きく運営ノウハウが必要なことです。
事業の特性上、原則として求められるのが「人が生活する住居」であるため、施設要件が厳しくなり多額の初期コストがかかります。
また、他の福祉事業のように時間提供型のサービスではないため、スタッフの教育、配置を含めたグループホームの総合的な運営ノウハウが必要です。
とはいえ、グループホームの開設時に利用できる補助金もあり、さらにグループホーム運営に長けている専門家の支援を受ければ、初期コストと運営ノウハウに関するリスクを最小限にして最大のメリットを享受できます。
これについては「グループホームの運営を成功させるためには」で詳しく説明します。
利用者側のデメリット
ご家族の負担軽減、将来的な不安解消が大きく、デメリットはとくにありません。肉体的負担だけでなく、精神的負担を大きく軽減する素晴らしい制度です。
グループホームの利用者、事業者それぞれの立場のメリットとデメリットをしっかりと理解し、開設・運営のヒントにしてください。
グループホームの設立費用(初期コスト)
グループホームの設立費用(初期コスト)
グループホームの設立には、多額の初期コストがかかると述べましたが、実際に設立するとなると、どのくらいのコストが必要なのでしょうか。
グループホームを始める場合、まったくのゼロから始める方法とすでに就労A事業を行なっている場合の2つがあります。大まかな目安として次を参考にしてください。(条件で異なります)
① ゼロからグループホームを設立する場合(税別)※施設は賃貸
- ・物件取得費100万~300万
- ・改装費用:100万~(消防設備後付けの場合)
- ・人材確保費:120万~
- ・弊社報酬:250万~(許認可の申請業務、運営コンサルティングなど)
- ・運転資金:300万~
合計:800万〜1100万
調達方法:自己資金・金融機関融資等
② 就労A事業をすでに行っておりグループホームの設立を始める場合(税別)※施設は賃貸
- ・物件取得費100万~300万
- ・改装費用:100万~(消防設備後付けの場合)
- ・弊社報酬:180万~(許認可の申請業務、運営コンサルティングなど)
- ・運転資金:300万~
合計:500万〜800万
調達方法:自己資金・金融機関融資等
※施設を建てる場合は以下の金額を参考に、前述の①、②の予算に追加してください
- ・土地取得費用:55坪~(×坪単価)
- ・建物建設費:床面積50平米~
- ・4000万~(土地価格により大きく変動)
グループホームの補助金と給付金
グループホームの補助金について
障がい者グループホームの開設にあたっては、国からの補助金が給付されることもあります。※人の雇用に関わるものに関しては助成金と呼ばれて給付されることも。
グループホームの開設には「グループホームの設立費用(初期コスト)」でお伝えしたような金額が初期コストとしてかかるのですが、補助金をうまく活用してコストを抑えることも可能です。
※グループホーム開設に関する補助金の場合、開設時や設備購入など短期的にかかる費用に対し、申し込み・審査・採択により単発的に支給されることがあります。ただし、地域によって違いがあり、確定した支給があるわけではないため注意が必要です。
● グループホームに関する助成金の例(※地方自治体で異なります)
「社会福祉施設等整備費補助金」(愛知県)
- ・対象法人種別・・・社会福祉法人、医療法人、公益法人、特定非営利活動法人、営利法人等
- ・創設(新築) 補助基準額・・・2,430万円 補助率3/4
- 引用元:https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/274280.pdf
グループホームの給付金について
福祉サービスで提供したサービスの内容、時間、日数等に応じて国保連より継続的に支給されるサービス費のこと。
補助金と異なり、給付金は施設に入居している利用者の人数に応じて必ず支給されるお金です。
グループホームの場合
利用者1名=基本単価×日数により計算します。
障がい者の区分により基本単価は異なります。以下をご参考にしてください。
1日あたりの給付金(1単位=10 円)
障がい支援区分 | 基本報酬※ | 夜間支援等体制加算Ⅰ |
---|---|---|
区分3 | 381単位 | 192単位 |
区分2 | 292単位 | 192単位 |
区分1以下 | 242単位 | 192単位 |
※世話人の配置を利用者4人に対して1人配置(4:1)した場合
計算例:区分3の障がい者が1ヶ月(30日)利用した場合
381+192×10×30=171,900円
この金額が1ヶ月に支給されることになります。
実際に当事務所(行政書士法人ルクロー)で設立から運営までサポートさせていただいている、障がい者グループホームにインタビューをしました。
株式会社松鶴が運営する「共同生活援助事業所パインクレイン」
経営者 藤原さん
グループホームの外観
当時の環境
就労継続支援A型事業所を運営。移転先として物件購入を検討、物件A(1Rマンション×13部屋一棟買い)が候補として上がる。
運営している方に聞きました。
「グループホームの運営はいかがですか?」
なぜルクローに相談されたんでしょうか?
「当初は顧問税理士に収益面の不安が払拭できないとの理由で反対されましたが、それでも諦めきれず、ルクローさんにご相談したところ、当該物件をグループホームとして活用する提案を受け、計画及び試算を依頼しました。その結果、短期・中長期的にも不安のない運営ができる見込みが立ち、開設を決意しました。」
グループホーム運営に関して不安はありませんでしたか?
「グループホームに関しては運営・業務ともに素人でしたが、以前のA型事業所開設時も申請や許可取得、設立後の業務内容の研修から運営指導、監査などすべてに不足なくご対応頂いた経緯があったので、今回も安心してお任せすることができました。」
グループホームを始めてみていかがでしょうか?
「利用者さんの仕事への意欲と集中力が向上しています。グループホームの利用者さんだけでなく職場全体の雰囲気が良くなりました。また、通勤の問題が解消されるのでA型の利用者さんの増加という嬉しい相乗効果が出ております。何よりも利用者さんが喜びが肌で感じられ、ほんとに良かったなあと思ってます。」
「何よりもプライバシーが確保されて、本当に落ちつける自分の居場所ができた。今までは自分の力ではこんなとこに住めなかったけど家賃の補助があるから嬉しいです。いきなり1人暮らしへはすごく不安でしたがここなら安心できます。」
NYさん
「自分だけの空間って本当にいいですし、今までは通勤に1時間もかかり出勤したら疲れてることもありましたが、今はそんなこともなくなりました。家賃補助もあり通勤も楽になり、急な入院なども手伝ってもらえたりするので色々なことが安心できます。」
FSさん
グループホーム運営のトラブルと対応
十分な注意を払っていたとしても、グループホームでは利用者が怪我をしたり、何か事故に巻き込まれてしまう可能性も十分にあります。そんな不安を和らげるためにも、住居者さん向けの損害賠償保険がありますのでご紹介しておきます。
損保ジャパン:http://www.toyama-ikyo.jp/common/pdf/insurance-heart.pdf
先も触れましたが、利用者のことを考えず、給付金だけを目当てにし、自己の利益しか考えていない残念な事業者がたくさん存在します。国としても当然そのような悪徳な事業者に施設を運営させるわけにはいきません。
そのため、常に抜き打ちで監査を行なっており、運営の状況を把握して、利用者を守るために厳しい目を光らせています。
監査は管轄行政の障がい福祉課が行い、定める基準に満たない、または違反している事業者に対しては厳しい罰則を適用します。
ルールを守れない事業者には、返戻金(過去に遡って支払われた報酬の全部または一部の返還、または指定取り消しもしくはその両方)を支払わせます。
例えば5年運営していた事業所が、返戻金(全額)が求められた場合、それまで支給された給付金を全て返金しなければいけません。相当な金額に膨れ上がっていることが多いので、その場合は倒産することと同じ意味をなします。
「介護報酬を不正受給、グループホームの指定取り消し 神戸市」 産経新聞より
https://www.sankei.com/west/news/170722/wst1707220050-n1.html
グループホームは他と比較して収益性が高いビジネスモデルだからこそ、利用者のことを最優先し、きめ細やかな施設運営が求められます。
それを現実化するためにも、専門的な知識と、最新の法令を知り、なおかつ日々の運営についてのノウハウ、監査があっても万全な対応ができる経験がある行政書士に支援をしてもらうことをオススメします。
グループホーム開設の流れ
障がい者グループホームを開設する流れを説明します。
開設は4つの段階に沿って進めていきます。
①資金調達→②法人設立→③設置基準を満たす→④グループホームの指定申請
それぞれで必要な要件・条件を満たすために重要なポイントがありますので、しっかり事前にチェックして開設に向けて準備を行いましょう。
① 資金調達
施設を賃貸する場合でも、運転資金を含めて充分な資金を用意しないといけません。なぜなら資金が少ないと開設の審査が下りず、またギリギリだった場合、充分な利用者が集まっていない期間は厳しい運営が求められるからです。
基本的に調達する資金の目安は以下の通り。
自己資金(グループホームの設立費用の満額)
自己資金が足りない場合、必要な金額の1/3〜1/4が自己資金
もし自己資金が足りない場合は以下の融資のポイントをお読みください。
融資のポイント
融資を受ける場合に注意しなければいけないのは、福祉事業の実情に沿った事業計画書を作る必要があるということ。なぜなら最近では各金融機関に福祉専門の担当者がおり、厳しい審査が行われるからです。
以前であれば一般的な融資案件として取り扱いされていたのですが、給付金目当てで開設しようとする事業者が増えている現状を懸念し、既存の施設の運営実情との整合性がある事業計画書を作れないところには融資はしません。(要は福祉のことを知ろうとしない、誰でも書けるような事業計画書では、実際の福祉事業と乖離しているから信用できないことを意味しています)
つまりグループホームを開設するためには、最初の融資段階から用意周到に進めていかなければならず、やはり福祉事業に長く携わり、融資の段階から支援してくれる専門家の力を借りる方が賢明と言えます。
②法人設立
グループホームは個人では運営できません。法人格を持った株式会社や合同会社、社会福祉法人、一般社団法人、NPO法人等でならなければいけないというルールがあります。すでに法人化されていれば問題ありません。
ただし法人の定款の事業目的に以下の文言を入れておく必要があります。
「障がい者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」
定款の目的欄に上記の文言が入っていない場合、法務局での定款の目的変更(追加)の手続きが必要ですので注意してください。
法人設立に関してはわかりやすい記事がいろいろありますので、ここでは割愛させていただきます。以下の記事も参考にしてください。
引用:https://sogyotecho.jp/kaisyaseturitu-matome/
③ 設置基準を満たす
実際にグループホームを開設する場合には、厚生労働省令第34号「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(第五章:認知症対応型共同生活介護)」に記載されている3つの基準を満たす必要があります。
3-1 設備基準(場所・設備・環境など)
3-2 人員配置基準(管理者・職員など)
3-3 運営基準(運営にまつわるルール、営業時間など各自治体の基準に則る)
それでは各項についてわかりやすくお伝えします。
3-1設置基準を満たす(場所・物件選び)
立地条件 | 入所施設又は病院の敷地内は不可 |
---|---|
定員 | 最低定員4人以上 (ただし複数の建物で行う場合は一つの建物につき2名以上) |
居室 | ・ 1つの居室の定員は、1人(2人が認められる場合あり※1) ・ 1つの居室の面積は、7.43㎡以上(収納設備等除く) |
その他の設備 | 居間、食堂、便所、浴室、洗面所、台所が必要 ※2 |
※1
居室の定員は1名。ただし、夫婦等で希望のある場合は2名でも可。事業者の都合で、一方的に2人部屋にすることは認められない。
※2
その他設備に関しては一つの建物内で10名毎に必要(ただし建物が複数ある場合は人数に関係なくそれぞれの建物に必要)
実際に不動産会社へ物件を依頼する際の伝え方は以下をご参考にしてください。
昭和57年以降の建物
・市街化調整区域でないこと
・建築確認申請が済んでいる建物
(建築計画概要書がある建物又は建築確認検査済み)
・図面があること
・障がい者事業での使用が可能(貸主がOK)
・増築や造作物を後から建てている場合は、適法に建てられたか?
・便所、洗面所、浴室、食堂がある (※居室がある階に、便所洗面が必要です)
・居室 7.43㎡以上/人 (有効面積) 定員4人以上
・自動火災報知機が各部屋に付いていること
3-2 人員配置基準を満たす(管理者・職員など)
定員6人の場合
職種 | 配置基準 |
---|---|
管理者 | 1名(兼務可) |
サービス管理責任者 | 1名 |
生活支援員 | 利用者区分による |
世話人 | 1名 |
3-3 運営基準(運営にまつわるルール、営業時間など各自治体の基準に則る)
・運営の方針
・事業所の名称や所在地
・営業日・営業時間
・利用者の定員
・サービスの内容
・苦情解決の処置
・サービスに関する費用
・研修実施について など
上記の基準について具体的に決めていく必要があります。
行政書士法人ルクローがサポートをする際には以下のような運営7ヶ条を作成していきます。
・コンプライアンスを遵守した業務が行えるようにスタッフ教育を行うこと。
・必要な日常業務を把握し、監査時に不備の無いようにすること。
・長期的な事業運営に対応する計画を策定し継承問題等に対応できるようにすること。
・地域の関係機関と連携すること。
・助成金・補助金を効果的に活用すること。
・基本給付金以外の加算を過誤なく取れるよう体制を構築していくこと。
④グループホームの指定申請(指定基準を満たす)
障がい者グループホーム(共同生活援助)は、障がい者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業に該当します。
したがって、グループホームの事業者指定を受けるには、事業所開設予定地の都道府県
(中核市以上は市)に対して指定申請手続きを行い、許可をもらう必要があります。
指定申請する際に必要な主な書類は以下の通り。
指定申請書 | 申請者(運営法人)、法人代表者、事業所の場所、開設日等の情報 |
---|---|
付表 | 事業所場所、人員配置等のデータ等 |
法人の定款 | 運営法人の定款 |
法人の登記簿謄本 | 履歴事項全部証明書 |
勤務形態一覧表 | 開業月のシフト表 |
組織体制図 | 開業時の人員体制 |
管理者の経歴書 | 職務経歴 |
サービス管理責任者の経歴書 | 職務経歴、保有資格、研修修了の証明 |
サービス管理責任者の資格証明書 | 保有資格の証明 |
サービス管理責任者の実務経験証明書 | 以前の職場の証明書 |
運営規程 | 運営に関する取り決め |
平面図 | 基準上の設備を整えているか |
居室等面積一覧 | 居室の広さの適合 |
設備・備品等一覧 | 必要備品の整備 |
誓約書 | 欠格事由に該当しないこと |
役員名簿 | 法人役員及び管理者 |
協力医療機関契約内容 | 利用者の傷病に備え、すぐに連絡可能な医療機関 |
介護給付費等算定届 | 報酬請求に関する届け |
事業等開始届 | 行政以外のものが福祉事業をやる場合必要な届出 |
苦情処理に関する措置の概要 | 利用者等から苦情があった場合の対応方法 |
事業計画書 | 法人の概要、施設の場所、居室数、開業予定日、開業動機等 |
収支予算書 | 開業後、一年間の収支予算を作成 |
賠償責任保険に関する書類 | 障害福祉サービス事業』または『共同生活援助』になっていること。 |
グループホームの運営は決して楽にできるものではありません。ただし就労A事業など、他に福祉事業をすでに経験されている場合、人員配置、環境設備、監査対策など対応は一緒なので問題なく行うことはできます。
もちろん、最初から十分な準備をしておけば円滑に進められるので、初めて取り組む方でも安心してください。
グループホームの運営を成功させるためには
グループホームの運営を成功させるためには以下の要素が必要不可欠です。
2)法令に関する知識
3)居室を満室にする集客力
4)スタッフの教育
5)障がい特性の理解
6)無駄のない人員配置
7)トラブル対応マニュアルの確立
8)万全の監査対応
1) 事業者の経営マインド
グループホームは障がい者の支援、自立を促す目的で運営されなければいけません。福祉サービスとはいえ、利用者・支援者のことを最大限に考慮するだけでなく、生まれた利益を還元するために、適切な運営、経営を行う意識を持たないといけません。
2) 法令に関する知識
関連する法律は時代や状況に合わせて常に改正される可能性があります。移行期間があるとはいえ、改正された後は以前は通用していた、問題なかったと主張したところで、適した運営をされているとは見なされず、法律違反として判断されます。
グループホームを運営する以上、常日頃から法律の知識を更新し続けなければいけません。
3) 居室を満室にする集客力
多くの事業者が勘違いしていることの一つとして「グループホームを開設すれば自動的に利用者が増える」ことがあります。
障がい者の人口が増えているとはいえ、同様にグループホームも各地域で増え始めており、黙っていれば利用者から申し込みがされるわけではありません。普段から利用者から選ばれるための努力が欠かせません。
そういった意味でいえば施設への集客力が求められており、その布石は土地選び、建物選びから始まっているのです。
開設だけに意識が取られ、肝心な利用者が0という最悪な結果にならないためにも、利用者を集められる集客力を鍛えなければいけません。
4) スタッフの教育
グループホームでは利用者を支援する支援員や世話人が必要です。障がい者のことを理解し、高いレベルでサービスを提供し続けるように、彼らの教育が重要です。 障がい者も一人の人間。気持ちを通わせる関係性を構築できるようなコミュニケーション術、サービス技術の向上を目指します。
5) 障がい特性の理解
利用者さんの障害の種類(精神、知的、身体)や障がい者支援区分(障害の重さ)の違いによって、支援の方法、気を付けてあげなければならない点が異なります。入所の段階で障害についてヒヤリングを充分行い、個々にあった支援を心がけることが大切です。
6) 無駄のない人員配置
スタッフの教育はもちろん、技術面や知識面だけでなく、彼ら自体の心のケア、十分な休息を取れるような環境づくりをすることが事業者に求められます。
ニュースで取り沙汰されるような悲しい事件も、無理な人員配置やスケジュールの弊害でしょう。事業者として十分に目を行き渡せられるような管理体制を構築しなければなりません。
7) トラブル対応マニュアルの確立
万全の準備を行なっていたとしても、思わぬ事故やトラブルが発生します。大事なのは最小限に被害を抑え、かつ再発防止に努めるようなトラブル対応マニュアルを作ることです。さらにマニュアルを机上の空論にしないよう、遵守し、いざという時に迅速に行動できるような訓練を怠ってはいけません。
8) 万全の監査対応
国の協力を得て成立するグループホーム。給付金を受け取る以上、定められた基準や法律を守ることは絶対です。日々の業務に忙殺され、必要な書類の準備、提出、報告、管理などが滞りなく進めていかないといけません。
監査が入るとなってから慌てて準備することがないよう、定期的な自主検査、確認を実施できるような仕組みづくりが最も重要です。
結局どのようにグループホームを開設すれば安心できるのか?
グループホームを開設するには3つの方法があります。
②FC(フランチャイズ)で始める
③士業に依頼する
それぞれの方法にメリット・デメリット(初期コストがかからない反面、ランニングコストがかかる等)があるので、しっかりと比較検討し、あなたにとって最適な方法を見つけてください。
なお、士業に関しては弊社サービスについても言及しておりますので、ぜひご検討くださいませ。無料相談を承っております。
すべて自分で行う | |
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メリット | 費用が安い |
デメリット | 膨大な時間と手間がかかる 知識不足により許可が下りない 運営の仕方がわからない |
費用 | 要、不要の判断ができず結局高くつくことも… |
期間 | 無限 |
監査 | 対応方法がわからない→廃業の危険 |
FC(フランチャイズ)でやる場合 | |
---|---|
メリット | ある程度お任せでできる |
デメリット | ロイヤリティが発生する(ランニングコスト) |
費用 | 一般的に高額 |
期間 | 標準的な期間 |
監査 | 本部の体制により大きく違う |
士業でやる場合 | |
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メリット | 安心できる |
デメリット | 運営に関するサポートが不安 |
費用 | 30万程度 |
期間 | 標準的な期間 |
監査 | 運営サポートができなければ対応不可能 |
ルクローに任せるメリット | |
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メリット | 安心確実な許認可取得 無駄な設置設備の削減 開始までの期間が短い ロイヤリティなし 豊富な監査経験 収益アップにつながる運営サポート 独自の成功ノウハウ スタッフに対する研修も充実 融資獲得実績100% |
デメリット | 全国からの依頼が多く、早めのご相談をお勧めします |
費用 | 250万〜(税別) |
期間 | 早い |
監査 | 万全の体制で対応可能(監査指導あり) |
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この記事の解説者
中村真由美
行政書士法人ルクロー 代表
大手システム会社を経て、行政書士として独立。さまざまな分野での経験も経ていくなか、福祉事業にまつわる業務をメインにサポート。開設だけではなく、運用、経営指導、監査など現場に強い行政書士として全国で活動中。
関西大学 文学部卒業
日本行政書士連合会 登録番号12301646号
兵庫県行政書士会会員 会員番号4784号
出入国管理業務申請取次行政書士
神戸商工会議所会員